“遊びごころ”が暮らしのスパイス。
ご主人のリタイアをきっかけに、道南から札幌への移住を決めたO様ご夫妻。
新たな生活の拠点として、ご主人のご実家をフルリノベーションし、セカンドライフを楽しむための住まいへと生まれ変わらせることに。
もともと妹さんのご自宅をSAWAI建築工房でリフォームさせていただいており、そのお宅を訪れた際に「素敵だな」と感じてくださったことが、今回ご相談いただくきっかけとなりました。

「明るく素敵になりました」とご夫妻。
数年後に半世紀を迎えるテラスハウス
「実家といっても自分自身はすでに函館に行っていたので、ここには住んでいませんでした」とご主人。45年前に建てられた現代版の長屋ともいえるテラスハウスに当初住んでいたのは、ご両親と妹さん。月日は流れ、ひとり暮らしをしていたお父さまが他界。その直後にご主人が定年を迎えました。「歳を取ったら便利な場所に住もう」というのが、夫婦の一致した考えだったといいます。札幌への引越しを決め、「父の家を直して住もう」と行動開始。セカンドライフのための家づくりがスタートしました。


SAWAI建築工房が手がけた前庭からも暮らしを楽しむO様ご夫妻の雰囲気が伝わってきます。

ここも元の風除室を室内化して
スペースを確保しました。
限られた面積で空間をやりくり。暮らしの機能を1階に集約
ご夫妻の一番の希望は「1階だけで暮らせるようにしたい」ということでした。あわせて「できるだけスマートハウスに」という要望も加えました。ベッドを含めたすべての生活機能を1階に置き、照明やエアコンなどを音声操作できるようにしたいという、老後に向けた希望です。ただ、面積が52㎡余りと決して広くなく、といって集合住宅のため増築ができず、電気のアンペア数も変えられないなど、難題がいろいろ。「ホテルみたいな感じとイメージを伝えましたが、古い建物で制約が多く、わたしたちが希望したことのなかにはムチャブリもあったと思います」と奥さまは話します。

ホテルのような余裕感と美しさも心地よく。
SAWAI建築工房では希望を叶えるべく試行錯誤。
1階なので、玄関を除いた残りのスペースで全部を満たさなければなりません。風除室のような半戶外空間を室内に取り込み、使える面積を拡大。細かく分かれていた部屋を一体化し、LDKとベッドスペース、愛犬の居場所を、使い勝手や暮らしやすさなどさまざまな課題をクリアしながら、効率よくワンルームに納めました。

二葉ちゃんの足洗いに便利な深型シンクをセットして。

収納を兼ねた場所ですが
窓が近くにあって明るく開放的です。
わたしたちからインテリアに関してお願いしたのは「ホテルみたいな」とか「ブティック風」「中国喫茶風」だとか、そんな漠然としたイメージだけでした。それがこんなカタチになって、さすがですね、ムチャブリな希望もなんとかしてくれましたし、SAWAIさんの提案は乗りたくなるアイデアがいっぱいで、受け入れてみると「いいな」と思うことが多くありました。

浴室とユーティリティを新設。
鉄骨造で隔壁にブロックが使われていたO様邸では、スペース取りが一番の難題でした。

素朴な質感が魅力的なレンガを敷くなど目にして楽しい裏庭空間になっています。
ブティックの気分で服を選び中国喫茶の趣にまったり和む
暮らしに必要な機能が凝縮しながらも、すっきりと余裕さえ感じられる1階のプラン。一方、2階はご夫妻から示されたキーワードをもとに、大胆な空間づくりが進められました。そのキーワードが「ブティックみたいなウォークインクローゼット」そして「中国喫茶みたいな部屋」です。階段を上がると正面には、まさにブティックを思わせる空間が。洋服がオープンクローゼットに美しく並び、棚の横には両開きの扉が姿見の役目を果たす収納を造作。中央に置かれたアンティークなテーブルとイスも、老舗ブティックのような風情です。隣接する納戸は「ブティックの流れで「フィッティングルーム」と呼んでいます」と笑う奥さま。暮らしを楽しむセンスが、ご夫妻の言葉の端々から伝わってきます。

テーブル席には居候の骸骨”ジェイク“も。
ウォークインクローゼットとオープンにつながるフリールームは、もうひとつのキーワード通り中国喫茶の趣。実はご主人は中国茶を趣味とされていて、茶器や道具はもちろん、家具も中国製や中国的なものを揃えていました。そして、これらからインスピレーションを得てSAWAI建築工房が提案したのが、ダイナミックな木蓮柄のクロスです。「SAWAさんは「ちょっと遊びかもしれないけれど」といって提案してくださるものが、魅力的で。このクロスもそうでした。取り入れてみると、そのよさがよりわかります」とご夫妻はいいます。


階段側に明かり取りの室内窓を設けました。
住む人とつくる人のいい関係
このおふたりにして、この素敵なお住まいあり。O様邸には、そんなふうに感じさせてくれる魅力がたくさん詰まっていました。それは、ご夫妻とSAWAI建築工房が一緒につくり上げてきた時間と信頼の積み重ねでもあります。
打ち合わせは、O様ご夫妻が札幌に来られるタイミングに合わせて行われ、「まるでお茶会かお食事会のようだった」とご夫妻。工事がすべて終わった今、「もう会えなくなると思うと、ちょっと寂しいですね」と奥さまがぽつり。
住む人とつくる人の関係が心地よく重なり合ったからこそ、O様邸のような住まいが生まれました。
これからも、ご夫妻らしい穏やかで心豊かな暮らしがこの住まいとともに続いていきますように――
私たちも、そんな想いでいっぱいです。

